いじめっこからの手紙
幼なじみの友人kが結婚式を挙げた。
ケーキ入刀の場面では、新婦の友人たちに交じって、私も二人のそばまで寄ってカメラを構えた。
2人に興味が無くても、式に華をそえる手助けとして、こういう行動も必要だと思う。
と、同時に、新婦の友人がだれ一人席に残っていないのに、一人イスに座り続ける度胸もないというのもある。
男性と違って、女性は、こういう場所でみんなと同調しないと、目立ってしまい、だいぶ恥ずかしいことになるのだ。
雑談の時間になって、こんどは、なんと女子たちは、新郎新婦にお酒をつぎに向かったのだった。
ほかの結婚式では、こういうことは新郎の友人男性しかやってるのを見たこと無いのに、
しかたない、自分もやることにした。
列のように並んで、みんなと同じように杓をしようと瓶を持った瞬間、新婦のkは、私に向かって、
「来なくていいよ」と言い放ったのだった。
一瞬、心が固まったが、少し動転しつつも平然を装いながら、酒をつがずに席に戻った。
細かい動作までは、来賓の方たちは見てないだろうから、
まぁ、大丈夫だろうと、自分をなだめた。
式も終わり、私はさっさと帰りたかったが、私のもう一人の幼なじみの友人sが、
「二次会があるだろうから、2人を待とう」といいだした。
Sは、新婦Kのいとこであり、生まれたときからの幼なじみだから、親身に話をしたかったのだろう。
だが、2時間待っても、新郎新婦は現れず、Sが控室まで見に行くと、
二人は式で出たのと同じものをのんきに食べてたのだった。
二次会ないならないって言えばいいのに・・・。
招待された新婦の友人のほとんどは、私たちとは別の高校時代の人たちで、
彼らは、二次会がないのを知らされてたのか、すでに帰ってしまっていた。
残ってたのは、中学時代の私たち3人だけだった。
10年ぶりの再会なので、うちら3人は、
食事の邪魔にならないよう、かたわらににすわり、すこし話をすることにした。
新婦のKは、さっそく新郎にSとHを「中学時代のともだち」と紹介したが、
私のことはそこに存在してないかのように無視をした。
新郎が「このひとは?」と言ってくれたら救われたのに、
表情も変わらず、何も言わなかった。
ま、この人にこの人あり、似たもの夫婦ってことか、と残念に思った。
kは、小学生時代から、頭もよかったが、その分、ずるがしこかった。
思い返せば、彼女からはたくさん嫌がらせというかいじめを受けた。
いじめの理由・・・小学生当時、彼女は「あなたが言い返さないから」と言ってたのを記憶している。
ののしり合いなんて、私の美的感覚からすると醜くてやりたくなかったのだ。
彼女のいじめが、なにをどうされたかは説明しづらい、あいまいなものばかりではあるが、
人間不信になった根源は彼女にあると思う。
とはいえ、あれほど泣かされたのに、それに目をつぶって、
彼女と一緒に遊びたいと執着してたのは、むしろ私のほうだった。
きっと、仲間外れになると生きていけないと必死になってしまうのは、
遺伝子のなかに、農村での生き抜く知恵が組み込まれているからなのかもしれない。
よくよく思いかえせば、昔から彼女は一貫して私を拒絶していた。
私は彼女のことを「友人・幼なじみ」と友愛の念で見てたけど、
向こうからすれば、ただのいじめの対象だったのかもしれない。
もう、ともだちは終わりにしよう、そう、このとき心に誓った。
結婚式の招待返しも、これで終わったのだから。
1週間ほどたって、新婦Kからなにやら手紙が届いた。
中身はなんだろう?
夫からあの冷たい対応を指摘されての謝罪文?二次会のお知らせ?・・・?
バカだの、くずだのと、悪態がかかれてあったらどうしよう、と怖くて開けることが出来なかった。
手元に置いてるのも呪いがかかってそうで怖い。
いたたまれず、すべての悲しみを含め読まずに破り捨ててしまった。
結局、内容はわからずじまい。
あれから7年もたったというのに、内容は何だったのかが時々気になって、
こんなことなら、頑張って見とけばよかったと思う。
自分では、それらがいじめとは認めてなかったけど、
そのせいで、私のその後に人生は、ところどころ腐食してしまったように思う。
(おわり)